算数で分かる!糖質制限でLDLが増える理由

糖質制限ダイエット
ケトン体ダイエットと言われたりしますが、
今、流行りのダイエット法ですね!
血糖値を上げるのは糖質だけ(タンパク質の過剰摂取でも若干上昇)なので、
糖質制限ダイエットの糖尿病に対する効果は絶大です!
糖尿病の改善に非常に理にかなっている糖質制限ダイエットですが、
「糖質制限ダイエットによって、LDLコレステロールが上昇した!」
という方も、結構みえるそうです。
そこで今回は、
糖質制限によってなぜLDLコレステロールが高くなるのか
についてお伝えしたいと思います。
今回はこんな内容です!
1.LDLコレステロールの求め方を知ろう!
名前はよく聞くのではないでしょうか。
悪玉コレステロールと呼ばれたりします。
コレステロールに悪玉も善玉もないんですけどね!!
コレステロールや中性脂肪などの脂質(あぶら)は、
血液(みず)に馴染むことができません。
脂質は、リポタンパク質と呼ばれる輸送体に乗せらて、
全身に運ばれます。
その輸送体の一つがLDLで、
コレステロールを全身に運ぶ輸送体です!
血液検査で、LDLコレステロールが測られることが多いですが、
LDLコレステロールは、「Friedewaldの式」によって算定されます。
Friedewaldの式:
LDLコレステロール = 総コレステロール - HDLコレステロール - TG(中性脂肪)/5
善玉コレステロール(くどいようですが、善悪はないです!!)と呼ばれます。
TG(中性脂肪)は、
カラダのエネルギーの予備タンクです。
このように、
LDLコレステロールは、コレステロール全体(総コレステロール)から、HDLコレステロールと中性脂肪(の5分の1)を引き算して求められます!
それでは、実際の数字を入れてみましょう!
総コレステロール:220
HDLコレステロール:50
中性脂肪:100
LDLコレステロール = 220 - 50 - 100/5 = 150
となりますね!
2.糖質制限をすると中性脂肪が減る!!
次に、糖質制限を行ったときの効果をみてみましょう!
糖質制限を行うと、血糖値が下がるだけでなく、
エネルギーとして使われやすいブドウ糖がカラダに入ってこないので、
ブドウ糖のかわりに予備タンクの脂肪や食事中の脂肪をエネルギーとして使われるようになります。
脂肪をエネルギーとして使うということは、
中性脂肪が減ります!
糖質制限ダイエットでは、
血糖値の改善がみられるだけでなく、中性脂肪も減る!
ということですね。
糖質過多になっている現代において、
実に理にかなったダイエット法といえますね!
3.1と2から導かれるものは?
糖質制限によって、
中性脂肪が減ります!
はい、ではここで、
LDLコレステロールの求め方を再度確認してみましょう!
Friedewaldの式:
LDLコレステロール = 総コレステロール - HDLコレステロール - TG(中性脂肪)/5
でしたよね。
では、問題です(ジャーじゃん)!!
中性脂肪が少なくなると、LDLコレステロールはどうなるでしょうか?
・
・
・
・
ハイ、正解です!
Friedewaldの式に従えば、
中性脂肪が減るとLDLコレステロールは高くなりますよね!
わかりやすいように、実際の数字を入れてみましょう!
(1)
総コレステロール:220
HDLコレステロール:50
中性脂肪:100
LDLコレステロール = 220 - 50 - 100/5 = 150
(2)
総コレステロール:220
HDLコレステロール:50
中性脂肪:50
LDLコレステロール = 220 - 50 - 50/5 = 160
このように、
総コレステロールとHDLコレステロールが変わらないと仮定すると、
中性脂肪が減れば減るほど、LDLコレステロールは高くなり(なるように見え)ます!
そしてこれが、
糖質制限によってLDLコレステロールが増えてしまう理由の一つです!
4.あくまで参考の一つにしてね(汗)
ここまでの話で、
「LDLコレステロールの求め方」という単純な算数で
LDLコレステロールが上がってしまう(ようにみえる)
ことが、お分かりいただけたかと思います。
ただし・・・!!
ここで注意していただきたいことは、
あくまでも総コレステロールとHDLコレステロールが同じだったと仮定した場合であるということです。
実際に、糖質制限によって
- 中性脂肪が増えてしまう方
- 総コレステロールが大きく変動してしまう方
- HDLコレステロールが増える方
などなど・・・
ヒトによって変化の出方が異なることがあります!
糖質制限によって、
血糖値の改善はみられても、
脂質に関する数値や尿酸値など
大きく変動、悪化してしまう方もみえるそうです(汗)
それに、
たとえ総コレステロールとHDLコレステロールが同じであっても、
カラダで起こっていることは計算式のように単純ではないので、
あくまでも参考の一つとしていただきたいということですm(_ _)m
カラダの中で何が行われているのか、
まだまだわからないことが多くあります。
一言では語れない!
ってことですね(汗)
一般的に、
糖質制限によってLDLコレステロールが増えてしまう一番の理由として、
食事の影響が考えられています。
(1)食事の影響は一時的
糖質制限をするということは、
今までの食事のバランスが明らかに変わります。
必然的に
タンパク質や脂質が多くなりますよね!
「卵などコレステロールを多く含む食事は避けましょう!」
ということがいわれていましたが、
コレステロールは、食事の影響をあまり受けません!
とはいっても、
ある程度は、食事の影響を受けると考えられています!
つまり、糖質制限食をすることによって、
普段よりもコレステロールを多く含んだ食事をすることでコレステロールが高くなる!
ということです。
ただし、食事によるコレステロールの増加は、
コレステロールの合成とのバランスが取れるまでの一時的なもので、
長期的にみると正常範囲内に落ち着いてくると考えられています。
糖質制限の第一人者である江部先生は、
糖質制限食開始当初は、
①<肝臓で産生するコレステロール>
②<食材からのコレステロールの増加>
③<小粒子LDLコレステロールが減って、大きいLDLコレステロールが増加>①がベースにあり、②と③が加わるので、
血清LDLコレステロール値は一旦、上昇することが多いです。
③は一見、LDLコレステロールが増加するのですが、標準の大きさの善玉のLDLコレステロールが増えるのでよいことです。
そのうち①が徐々に減少して調整するので、
徐々に基準値になっていきます。個人差が大きくて、基準値になるのに半年~1年~2年~数年かかることがあります。
「ドクター江部の糖尿病徒然日記より抜粋」
と、おっしゃられています。
(2)中性脂肪が高いことに注意が必要!
江部先生は、
中性脂肪が多くて、HDLコレステロールが少ない人は、小粒子LDLがたくさんある可能性が高いので、危険です。
HDLコレステロールが多くて中性脂肪が少ない人は、小粒子LDLコレステロールと酸化LDLコレステロールは少ないので安全です。「ドクター江部の糖尿病徒然日記より抜粋」
と、おっしゃられています。
小粒子LDLは、sdLDLと呼ばれています。
中性脂肪が高いとLDLコレステロールが小型化し、
超悪玉と呼ばれるように動脈硬化の原因となります!
また、中性脂肪が多いと
レムナントリポ蛋白の発生にもつながります!
そのため、
LDLコレステロールの数値だけでなく、
中性脂肪の数値にも気をつける必要があります!
江部先生は、糖質制限時の中性脂肪の測定について、
10時間以上絶食後の、早朝空腹時のデータ
糖質制限食の場合、食後であれば、数時間は食材由来の中性脂肪が血中に存在するので、中性脂肪値を正確に評価するときは、上記の条件で検査することが必要です。
「ドクター江部の糖尿病徒然日記より抜粋」
と、注意事項をあげられていますので、
血液検査を受けるときは、前日から準備をしておくことが必要になりそうです。
いずれにしても、個人差はあっても、
糖質制限が及ぼす中性脂肪やLDLコレステロールへの影響は、
長期的にみれば正常範囲内に落ち着く
と考えられています。
(LDLコレステロール値の改善がみられない場合や増加が継続する場合は、自己判断せずにお医者さんにかかるようにしてくださいね!家族性高コレステロール血症など別の要因が考えられることもあります。)
さいごに
コレステロールについては、
様々なことが言われています。
ですが本来、
コレステロールはカラダにとって欠かすことができないもので、
非常に重要な役割を果たしてくれています。
LDLも、全身にコレステロールを届けるためには必要で、
決して悪者ではないのですが、それが酸化されることによって真の悪者に変わります!
「木を見て森を見ず」
僕たちはどうしても木にばかりとらわれがちになってしまいます(汗)
コレステロールの増減という局所的なことにとらわれすぎずに、
カラダでは何が起こっているのか?
一歩下がった目線で見ていくと
別の側面が見えてくるのではないでしょうか!
カラダでは何が起こっているのか?
そういう視点から、健康について一緒に考えていきませんか?