テレビを騒がせた高血圧の薬、ARBって何?

血圧の薬、今回は、ARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)です。
このタイプの薬は、Ca(カルシウム)拮抗薬に次いでよく使用されている薬になります。
臓器を保護してくれる効果が期待されるのですが、
Ca拮抗薬に比べて、高価であることで問題として取り上げられることもあります。
それでは、ARBがどのようなものかみていきましょう。
今回はこんな内容です!
1.ARBの特徴を知ろう
薬は、種類に応じて異なる特徴を持っています。
ARBでいわれていることは、血圧を下げる効果の他に、心臓の肥大を抑える心保護作用、脳の血液循環を改善する作用、動脈硬化を防ぐ作用もあるといわれています。
また、インスリンの効きを改善する作用も有することが報告されているので、糖尿病の発症を抑える可能性も有しています。
簡単にまとめると、
「降圧効果」と「臓器保護効果」です。
だから、
心臓や腎臓、脳などの臓器に病気を持っている方や糖尿病などを有する方に対して第一選択薬として使用されることになります。
尿酸を下げる効果もある!
ARBの中には、尿酸を下げる効果(尿酸排泄作用)のあるという報告がされているものもあります。
「血圧の薬も尿酸の薬も飲んでいる」
という方に対しては、ARB(血圧の薬)だけで、尿酸値の改善も期待できるかもしれません。
薬を減らしたいとお考えの方は、一度、医師や薬剤師に相談してみるといいと思います。
ARBの難点としては、「薬が高い」ということです。
これに対しては、ARBの中には、ジェネリック医薬品も出ているものがあるので、そちらを選択することで対応することができます。
ジェネリック医薬品については、様々な考えがあります。
個人的な意見については、別の機会にお伝えしていきたいと思います。
2.グレープフルーツ(ジュース)との相性は?
「血圧の薬をグレープフルーツジュースで飲んではいけない」
ということを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
たしかに、血圧を下げる薬の中には、グレープフルーツとの相性が悪いものもあります。
ARBに関しては、グレープフルーツとの相性は悪くありません。
だからといって、
「グレープフルーツジュースで薬を飲んでいい」
といっているわけではないですよ。
薬をのむときは、基本的に「水」か「お湯」!
「フォーマル」な格好といわれたら、とりあえず「スーツ」みたいな感じです。
「グレープフルーツを食べたいな」と思ったら、食べてもいいですし、
「グレープフルーツジュースを飲みたいな」と思ったら、飲んでもいいですよ、
ということです。
3.ARBの副作用って何?
ARBは基本的に、副作用が少ないと言われています。
ただし、妊婦さんや授乳婦さんは飲んではいけない(禁忌)となっています。
妊婦さん・授乳婦さんと薬との関係は、本当に大切だと思います。
これは、本人さんだけでなく、ご家族にも知っておいてもらいたいですし、
薬を処方したり、投薬したりする専門家も知っていなければならないことだと思います。
この内容は、今後の課題としてしっかりとまとめていきたいと思います。
ここで知っておいてほしいことは、
ARBは妊婦さんや授乳婦さんは飲んではいけないということです。
その他には、血液中のカリウム濃度が高くなる高カリウム血症や腎臓の機能を低下させる可能性があります。
「あれっ!?」
と思われた方みえますか。
そうなんです、
ARBは腎臓を保護する作用があるといわれているのに、腎臓の機能を低下させる副作用もあるのです。
薬の世界ではよくある話で、
「めまい」の薬の副作用が「めまい」
といった感じです。
薬がカラダの中でどのような影響を及ぼしているのか、完全には分かっていないんです。
だから、薬とは上手に付き合って、できるだけ薬に頼らなくてもいいようにする。
そのためには、生活習慣の改善がすごく大切です。
生活習慣については、こちらの記事も参考にしてみてください。
4.ARBはどうやって効くの?
ここは、興味があればみてください。
ARBは、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬ですので、その名の通り、アンジオテンシンⅡが作用する受容体を阻害することで作用が発現します。
こちらのサイトにわかりやすく作用機序が図示されているので、参考にしてみてください。http://www.adalat.jp/ja/home/pharmacist/basic/03/t30.php
アンジオテンシンⅡには、受容体が2つあります。
この2つは、AT1受容体とAT2受容体と呼ばれ、特にAT1に強く作用して効果を出します。
ここで少し考えてみてください。
2つの受容体のうち、1つを抑えるとどうなるか?
今まで2つにくっついていたうちの1つがくっつけなくなると、アンジオテンシンⅡが溢れます。溢れたアンジオテンシンⅡは、残っているもう1つの受容体にくっつくことになり、相対的にAT2受容体にくっつく量が増えます。
ARBは、AT1受容体を阻害することで血管収縮作用等を抑制するだけでなく、AT2受容体の作用を強めることで血管拡張作用等を増強するという仕組みです。
血圧は、何によって決まるのか?
これは、
【心拍出量】と【末梢の血管抵抗】、つまり、【血液の量】と【血管の硬さ】でした。
ARBは、Ca拮抗薬と同じように、【血管の硬さ】に作用することによって効果を発現する薬です。(副次的に、血液の量にも作用します。)
Ca拮抗薬については、こちらもどうぞ
5.同じ分類でも効果に、違いがある
ここも、あくまで参考までに。
ARBに限らずですが、同じ分類の薬でも、その効果には違いがあります。
ARBの降圧効果に関しては、次のような強弱があるといわれています。
アジルサルタン(アジルバ®)>オルメサルタン(オルメテック®)>テルミサルタン(ミカルディス®)>イルベサルタン(アバプロ・イルベタン®)>カンデサルタン(ブロプレス®)>バルサルタン(ディオバン®)>ロサルタン(ニューロタン®)
簡単にそれぞれの特徴だけ示します。
アジルバ:降圧効果が最も高い
オルメテック:高い降圧効果と、臓器保護作用
ミカルディス:肝臓で代謝されるため、腎臓に病気を抱えている方に使いやすい
イルベタン・アバプロ:腎保護作用のエビデンスが多数報告されている
ブロプレス:適応症として心不全がある(保険上、認められているということ)
ニューロタン:尿酸排泄促進作用を持つ、降圧効果は弱い
「よくある副作用症例に学ぶ降圧薬の使い方」
薬の種類の違いによって、効果に差があります。
服薬指導などで、患者さんの背景を把握し、適切な薬が使用されているかどうか、確認することも薬剤師の仕事の一つです!
6.まとめ
今回は、ARBについての記事になります。
ARBは、Ca拮抗薬と同じように、代表的な降圧薬です。
降圧効果の他に、臓器を保護する作用が確認されています。
そのため、臓器障害を伴っている方に使われやすい薬となります。
副作用が比較的少ないことも、使われやすい理由の一つですが、
薬の値段が高いことがネックとなります。
薬には、作用もあれば副作用も必ず存在します。
薬と上手に付き合うことが、本当の意味での健康につながります。
病気と薬、上手な付き合い方を目指しましょう!