高齢者の血圧コントロール

最近、薬局で服薬指導していると、20代や30代で血圧の薬をもらいに来られる方もみえます。
食生活やストレスなど、様々な要因によってカラダのバランスが崩れやすくなっている社会になってきているという危機感を覚えています。
とはいえ、高血圧は加齢に伴って増加します。
高齢者と呼ばれる65歳以上では、60%以上の方が、後期高齢者と呼ばれる75歳以上になると、なんと80%もの方が高血圧に罹患している
「国民健康・栄養調査」
というデータも出ています。
特に75歳以上の方は、加齢によって様々な体調不良や身体的能力の衰えを伴っているので、バランスを崩しやすく、血圧の変動も大きくなってしまいます。
65歳以上での、血圧コントロールはどうすればいいの?
今回は、その疑問にお答えしていきたいと思います。
今回はこんな内容です!
1.高齢者でも血圧コントロールしなければいけないのか?
「高齢になれば、血圧が高くなって当然!」
「血圧が高くても大丈夫!」
という話を聞くことがあります。
以前は、年齢+100mmHgが血圧の目安
というふうに言われており、これが年々下がってきて、現在の目安(高齢者:140/90mmHg未満、後期高齢者:150/90mmHg未満)とされています。
血圧の治療目安については、こちらも記事もどうぞ
高血圧の薬を販売するために製薬会社が基準値をどんどん下げるように仕向けている!?
という説もあります。
この説を信じるか否かはさておいて、データではどのようになっているのか、これを確認したいと思います。
高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)によると、
日本で、心血管病の既往がない約100万人に対して行われた研究によると、血圧と心血管死亡率との間に正の関連が認められ、この関係性は高齢ではやや弱くなるものの80歳を超えても正の関連がみられる。
とあります。
100万人ものヒトを対象として行われた調査で、関係性が示されているということなので、心血管による死亡ということに着目すれば、血圧を下げることが重要であるといえます。
2.二次性高血圧に注意しよう!
高齢者は、何種類も薬を服用されている方が多くみえます。
服薬指導をしていると、20種類近く薬を服用されている方がみえて、こんなに薬を飲んで大丈夫かなと思ってしまいます。
薬の中には、副作用として血圧を上げてしまうものがあります。
薬で血圧が上がるから、薬剤誘発性高血圧と言うんですけど、このように血圧が上がる原因がはっきりとしているものを二次性高血圧といいます。
気をつけなければいけない薬も多いんですが、特に注意してもらいたいのが、いわゆる痛み止めと呼ばれる薬です。
「あちこち痛くて、痛み止めがあるから助かるわ~~。」
「私は、痛み止めが欠かせないのよ!」
と言われる方も多くみえます。
でもその痛み止め、本当に注意してくださいね!
痛み止めは毎日飲むものではないです!
決して治してないですし、むしろ痛みを誤魔化すことによってカラダが教えてくれている信号を止めてしまっている事になってますから!!
脱線はこのくらいにして話を高血圧に戻すと、
薬によってカラダのバランスが崩れて別の薬を飲んでいるという状況になっている可能性があるということです。
まずは、現在服用している薬について、本当に必要かどうか、棚卸しをするとともに、薬について専門家に相談してみてください。
血圧を上げる可能性がある薬については、今度お伝えしたいと思っています。
3.降圧治療について考えよう!
高血圧の治療をした場合としなかった場合と比較すると、心筋梗塞や脳卒中が減少し、それに伴って死亡に至ることも減少するという結果が得られています。
これは、80歳以上でも認められたので、後期高齢者(75歳以上)も含めて、高齢者の積極的な降圧治療が勧められています。
では、どのくらいを目標に血圧コントロールすればよいのか?
コレについてもみていきましょう!
JSH2014に気になる報告があります。
高齢者で歩行速度が早い方(6メートルを7.5秒未満)は、高血圧(収縮期血圧140mmHg以上)だと生命予後が、高血圧でない方と比べて悪く、歩行速度が遅い方は、高血圧の有無に関係なく、歩行困難な方は、逆に、むしろ血圧が高いほうが、生命予後がよかった。
とされています。
このような特徴的なデータやその他の様々なデータによって、
降圧目標が現在(高齢者:140/90mmHg未満、後期高齢者:150/90mmHg未満)の基準に至り、個々の生活環境や身体状況などを踏まえて特別に注意を要する場合は別途目標を設定する
というスタンスを取っています。
だから、昔に比べて現在の目標値がだいぶ低くなったことには、データに基づく理由があるということです。
それに加えて、日本人は欧米と比べて、血管が詰まる病気(梗塞)よりも、血管が破れる病気(脳卒中)が多いという特徴があります。
血圧が高いと、血管が破れやすくなるということは容易に想像できると思います。
この特徴も踏まえて、血圧コントロールが厳格になっていったのではないかと考えます。
4.転倒に注意しよう!
高齢者が寝たきりの状態になってしまう原因として最も重要なのが、骨折です。
骨折や寝たきりがなぜいけないのか、色々言われていますが、寝たきりになると認知症が一気に進むことがあります。
また、高齢者が骨折すると治らないことあります。加えて、骨折が死につながることがあるので、注意しなければいけません。
骨折の原因としては、転倒が重要となります。
血圧の話でなぜこんなことをお伝えするのか、
それは降圧薬が転倒につながる可能性があるからです。
血圧が下がりすぎると、めまいやふらつきがでます。
これによって転倒につながってしまうからです!!
薬の増加や変更をした時など、特に注意が必要です。
併せて、身の回りの整理など、転倒につながるような環境の改善も行うようにしましょう!
まとめ
今回は、65歳以上の高齢者の血圧コントロールについてでした。
高齢者も高血圧によって、心血管リスクが上昇します。そのため、血圧コントロールが必要となります。
降圧目標は、高齢者:140/90mmHg、後期高齢者:150/90mmHgとなります。
高齢者は、複数の薬を飲んでいることがあります。薬の中には、血圧を上げてしまうものがあるので、飲んでいる薬の棚卸しをすることも必要です。
血圧の下がり過ぎにより、めまいやふらつきがでることがあります。転倒につながる危険もあるため、注意してください。
高齢になるほど、薬に頼りがちになります。
しかし、薬が病気を引き起こしている可能性があることも事実です。
薬の棚卸しをすることで、健康につながります!
今飲まれている薬、一度、見直してみてはいかがでしょうか?