闘争と逃走のホルモン、アドレナリンと高血圧

アドレナリンって言葉を聞いたことはありませんか?
「なんか元気がでるやつ」
こんなイメージを持っておられる方もみえるのではないでしょうか。
その通りなんですね。
アドレナリンは「Fight(ファイト)」、つまり、戦う状態にカラダを持っていくときに分泌されるホルモンです。
スポーツの試合などで、
興奮していたり、緊張していたりしたら、痛みをあまり感じなかった経験ってありませんか?
このような状態の時が、戦闘態勢に入っていて、
アドレナリンがガンガン出ている状態です!
このような状態のときって、血圧はどうなっていると思いますか?
おそらく高くなっていることが予想できると思います。
そうなんです、血圧は高くなっているんです。
今回は、このアドレナリンの働きを抑えることによって、降圧作用を示す薬の話をお伝えします。
1.まずはアドレナリンの働きを知ろう!
アドレナリン(エピネフリンとも呼ばれます)は、
ストレス反応の中心的な役割を果たし、血中に放出されると心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開き血糖値を上げる作用などがある
「ウィキペディア」
とあります。
ここでまた、興奮した時のことを思い出してください。
「呼吸は荒くなり、目は見開き、心臓もドクドク活発に動いている」
このようなイメージを持ってもらえるとアドレナリンの理解は完璧です。
アドレナリンには、受容体といって、受け皿が、αとβの大きく2種類あります。
α、βはさらに細かく分類されるのですが、詳細はサイトを貼っておきますので、こちらをみてください。
http://tsunepi.hatenablog.com/entry/2014/11/04/073000
アドレナリンと高血圧との関係で、重要なのはβ受容体の方です。
α受容体も関与するのですが、αは次でお伝えします。
参考のサイトにもあるように、β受容体はさらに3つに分類されます。
「1が心臓、2が気管支、3が脂肪」
という簡単な理解でいいと思います。
くどいようですが、アドレナリンは「戦闘態勢」にします。
先程の理解と、この戦闘態勢を合わせて1、2、3のそれぞれにアドレナリンが働くとどうなるのか、少し考えてみてください。
そうですよね、
1に働くと心臓がドクドク。血圧や心拍数が上がります。
2に働くと、呼吸が荒くなる。気管支が広がります。
3に働くと、脂肪は燃えやすくなる。
このようなイメージを持てたのではないでしょうか!
このイメージを持ったまま、血圧を下げる薬を作ることを考えてみてください。
どこに働く薬を作ればいいでしょうか?
正解です。β1受容体ですね!
では、β1受容体拮抗薬(βブロッカー)について、みていきましょう!
2.βブロッカーの特徴
βブロッカーは、どのような症例に対してもある程度の効果が期待できるとされています。
だってね、
心臓の働きを抑えるんだから、そりゃ血圧も下がるでしょ!
ということです。
心臓の過剰な働きを抑える薬なので、心臓の動きが元気な若年者の高血圧や労作性狭心症、脈拍数が多い頻脈を合併した例などで用いられます。
労作性狭心症とは、
冠動脈の狭窄のため心筋への血流が減少し、おもに階段を登るなどの運動時に胸部症状が生じる疾患です。
「東京大学医学部附属病院循環器内科」
東大から引用しただけで、信頼度はかなりアップする感じがしますね笑
心臓の血管が細くなるなどの原因によって、血液の流れが悪くなる(減少する)と、心臓が酸素不足を起こしてしまって、胸の痛みなどの症状がでる、これを狭心症というんですが、これが運動などによって引き起こされるのが、労作性狭心症という疾患です。
反対に、安静にしているときに起こる狭心症を「安静時狭心症」といいます。
病気の名前って、あんがい都合よく付けられている場合が多いんです。
ただこのβブロッカーは、他の高血圧の薬と比べて臓器保護作用や脳卒中の発症を予防する効果が弱いため、高血圧ではじめに使われる薬(第一選択薬)からは、外れてしまっています。
その他の特徴として、
心不全にも使われることがあります。
このあたりはややこしいので、今回は、高血圧について理解してもらえればOKです!
ざっくりまとめると、
心臓の動きを抑えるから、心臓が過剰に動くことによる高血圧に対して期待した効果が得られるよ!
ということです。
3.副作用に注意!
アドレナリンの受け皿が、大きく2種類あること、そしてそれがさらに細かく分類されることをお伝えしました。
副作用が出やすいかどうかを考えた時、特に気をつけなければ行けないのは、受け皿がたくさんある場合です。
なぜなら、受け皿の一つ一つに作用することでヒトのカラダが成り立っているんだから、それぞれには役割があります。
そのうちの一つを抑えたいといっても、完全に抑えることはできないですし、たとえ一つだけ抑えることができたとしても、他とのバランスに影響しないという保障はありません。
一応、薬としては、一つの受容体に「特異的に」みたいな表現を使って、「選択性拮抗薬」というような名前をつけます。
また、一つ抑えると、相対的に他の作用が強くなる!
という話はARBのところでしましたので、興味があれば一度見てみてください。
βブロッカーで気をつけなければいけない副作用は、喘息の悪化です。
振り返ってみてください。β2は気管支でしたよね。
それをブロックすると、気管支が小さくなってしまって喘息を悪化させる恐れがあります。
他にも、心臓を抑えるから脈拍が少なくなる徐脈、脂肪の燃焼に関わるのを抑えるから血糖値が上がったり、脂質の代謝異常が生じたりします。
悪夢をみるようになるという副作用も報告されています。
アドレナリンが、色々なところで役割を果たしているので、それを抑えると色々な副作用が出る可能性があるということです。
また、冠攣縮といって心臓の血管が痙攣を起こすように収縮する症状を引き起こしやすくなるという報告もされているので、注意すべきことが多い薬になります。
冠攣縮:
心臓の表面を走行する比較的太い冠動脈が一過性に異常に収縮した状態
「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」
「うわっ、怖いから薬飲むのやめた!」
という方も出てくるかもしれません。
ですが、これにも注意が必要です。
βブロッカーは、急に中止すると離脱症状が出ることがあります。
だから、自己判断はせず、専門家とよく相談しながら徐々に減量して行く必要があります。
もちろんこれには、普段の生活を見直していくことを併せて行っていく必要があります。
「生活を何も変えずに薬だけ急にやめる」
これが一番危険です!
βブロッカーについて僕自身としては、「怖い(注意が必要な)薬だな」という認識です。
服薬指導をするときには、
「心臓はドキドキしませんか?えらい(これ方言なんですが、「しんどい」ということです)ことはありませんか?」
ということを確認するようにしています。
「毎回、同じことを」と思われている方もみえるかもしれません(汗)
でも、気になったらそれをお医者さんに伝えてもらったり、自分にも伝えてもらえればいいので、「印象を残すことができればいいな」と考えています。
まとめ
βブロッカーは、アドレナリンの働きを抑えることで血圧を下げる薬です。
心臓の働きを直接抑えるので、血圧を下げる効果が期待できます。
アドレナリンはカラダの中で様々な働きをしてくれているので、それを抑える薬は色々な副作用が出る可能性があります。
薬には頻度・重症度に違いがあれど、必ずリスクがあります。
普段の生活を見直すことで、
「薬を減らす・薬に頼らない」
生活をしていけるようにしていきましょう!!