カリウム保持性利尿薬の特徴

前回は、高血圧に使われる利尿薬として、チアジド系とループ系についてお伝えしました。
今回は、前回の続き、高血圧に使われる利尿薬としてカリウム保持性利尿薬についてみていきたいと思います。
今回はこんな内容です!
1.高血圧に使われる利尿薬、カリウム保持性利尿薬の特徴
チアジド系利尿薬、ループ利尿薬は、腎臓でナトリウムの再吸収(おしっこの原料としてろ過したものを、再度カラダに取り込む作用)を抑制することによって、利尿作用を発現しています。
そしてこの時、カリウムも一緒に排出してしまうので、低カリウム血症という副作用があります、という話でしたね。
カリウム保持性利尿薬は、その名の通り、カリウムの排出をすることなく利尿効果を出してくれる薬です。
ということは・・・
正解です、
カリウム保持性利尿薬には低カリウム血症の副作用はありません!
逆に、カリウムの量が上昇してしまうので、
高カリウム血症の副作用が出てきます!
ヒトのカラダって、色々なバランスが取れて成り立っているんですね!
今は、添付文書といって「薬の説明書」を簡単に検索することができます。もちろん、薬局に行っても簡単に確認できるような体制が取られています。
あまり、というか、全く目にする機会はない方が多いと思いますが、一度みてみるのもおもしろい!?かもしれないですね。
参考までに
http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00053638.pdf
カリウム保持性利尿薬には、アルドステロン拮抗薬とその他の薬があります。
①アルドステロン拮抗薬
そもそも
「アルドステロンって何?」
という話になりますよね。
アルドステロンとは、
腎臓でナトリウムの再吸収を促進するホルモン。ナトリウムの再吸収によって、高血圧につながる
「ウィキペディア」
血管に対する直接の収縮作用がある。
心筋線維化、リモデリング、血管障害などの作用を有し、心臓、腎臓、脳に対して直接に臓器障害を引き起こすことが明らかにされた。
アルドステロンを過剰に分泌している原発性アルドステロン症という疾患では、心血管疾患、腎障害の合併頻度が多いことも示されている
「よくある副作用症例に学ぶ降圧薬の使い方」
何やら難しいことが書いてありますが、
「血圧を上げるホルモン」
と理解すれば、簡単ですよね!
(だいぶ、ざっくりしていますが(汗))
その血圧を上げるホルモンを抑制するから、降圧効果が出るということになります。
これはまた、作用機序でもみていきましょう!
最近では、
カリウム保持性利尿薬に心不全患者の予後を改善するという報告がされている
「よくある副作用症例に学ぶ降圧薬の使い方」
ので、心不全を合併している方にも使われる例が出てきているそうです。
他にも、RA系ででてきたレニンの活性によることなく効果が出るので、低レニン性の高血圧(レニンの関係が少ない高血圧)や難治性本態性高血圧に対しても有効性があると言われています。
RA系については、こちらも参考にしてみてください
難治性本態性高血圧??
難しい言葉ですよね!
これは何かというと、
まず本態性高血圧というのは、原因がはっきりしていない、
つまり、原因不明の高血圧のこと、実はこれが高血圧の9割にもなります。
そして、「難治性」っていってますが、
ここでまずしっかりと理解していただきたいのは、
「高血圧の薬で、高血圧は治りません!」
血圧を下げているだけです!!
血圧を下げる効果はあります!
「じゃあ、難治性ってなに?」
っていう話になるんですが、これは、いろんな薬を使ってみたけど効果が思うように得られなかった。
血圧が思うように下がらなかったという意味です。
②その他のカリウム保持性利尿薬
その他の、と書いていますが、これは、アルドステロンが関わりませんよ、ということです。
つまり、アルドステロンに関係のないカリウム保持性利尿薬ということです。
これに関しては、「そういうのもある!」ということでいいと思います。
もう一つ、ループ利尿薬の中にも他のループ利尿薬と比べるとカリウムを保持する作用が強いものもあります。
トラセミド(ルプラック®)と呼ばれる薬がそれにあたります。
色々盛りだくさんで大変でしたね、ポイントだけでも掴んでもらえると幸いです。
2.副作用は何があるの?
続いて副作用についてみていきましょう!
ちらっとだけ書いたのですが、カリウム保持性利尿薬はカリウムが高くなります。
そのため、高カリウム血症が副作用としてあげられます。
腎臓の機能が弱っている方は、もともとカリウムを排泄する力も落ちています。これは、お年寄りでも同じことがいえます。ヒトは高齢になるにつれて、様々な機能が低下していくからです。
だから、腎臓に障害がある方などに対しては、注意が必要です。
また、ARBのところでも書いたのですが、薬によっては、カリウムが高くなってしまうものがあります。
それらの薬とこのカリウム保持性利尿薬を併用すると、高カリウム血症が発現しやすくなってしまうので、これまた注意が必要です。
薬の種類によっては
「併用してはダメ!」
というものもあります。
薬は単独でも副作用が出ますし、併用するとその副作用がさらに複雑に発現する可能性が出てしまいます。
アルドステロン拮抗薬の一つスピロノラクトン(アルダクトン®)は、プロゲステロン受容体などの性ホルモン受容体とも結合します。
そうするとどうなるか・・・
男性が、女性化します!
「じょ、女性化!!??」
どういうことかというと、女性化乳房や勃起不全になったりします。
女性にも影響があって、月経過多などの副作用が現れることがあります。
「一昔前、ダイオキシンがホルモンバランスに影響を・・・」、「環境問題が・・・」
という話があったと思います。
環境問題も大事です。これは、みんなで取り組まなければいけない問題です。
ただ、薬によれば、このバランスを崩す作用が、いとも簡単に、しかもダイレクトにできてしまうんです!
だから、できる限り薬は少なくできるように、普段の生活に気をつけることが大切になってきます。
新しく使用可能となったプレレノン(セララ®)という薬には、性ホルモン受容体と結合しにくいことが分かっていることも、お伝えしておきますね。
3.利尿薬ってどうやって効くの?
作用機序については、特徴のところでも触れたので、参考サイトを載せておきますね。
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1677
https://www.adalat.jp/ja/home/pharmacist/basic/03/t27.php
①アルドステロン拮抗薬
アルドステロン拮抗薬は、ナトリウムの再吸収を促進するアルドステロンの作用を抑制することによって、ナトリウムの排泄を促進します。
②それ以外
遠位尿細管、集合管のナトリウムイオンチャネル(ナトリウムイオンの通り道)を抑制することによって、ナトリウムの排泄を促進します。
これが、カリウム保持性利尿薬の作用機序です。
まとめ
今回は、高血圧に使われる利尿薬のうち、カリウム保持性利尿薬についてでした。
特徴をまとめると
・低カリウム血症にはならないですが、高カリウム血症になる可能性があります。
・薬の中には、性ホルモンの働きに影響するものがあります。
・腎臓の機能が低下していないか注意が必要です。
途中、「えっ!!!」
と思われるような衝撃的な内容も書きました。
でも薬を飲むということはそのくらいの覚悟が必要だということです。
薬には必ずリスクがあります。
普段の生活を見直すことで、
「薬を減らす・薬に頼らない」
生活をしていけるようにしていきましょう!!